【店部推薦図書21】「江戸絵画の不都合な真実」狩野博幸(筑摩選書)



作者は1947年生まれ、アカデミズムの主流とは離れた旺盛な活動で知られる日本近世美術史家。
ちなみに日本絵画の「狩野派」とは関係ないそうです。

本書で取り上げられている画家は、岩佐又兵衛、英一蝶、伊藤若沖、岸駒、葛飾北斎、写楽など。
あまり美術史というものに馴染みはなかったのですが、時代考証や絵画分析がここまで進んでいることにびっくりしました。
それら、歴史的裏付けを元にしての論理的跳躍力もパワフル。図版を多用しつつ、ぐいぐい読ませるエンタメ性はあまりこのテの本には無いものかも知れません。

特に北斎の富士講(富士山民間信仰)との関係、写楽のニセモノ探しの箇所などは実にスリリングであり、今後の研究はこの論を踏まえることになるでしょう。

さて、タイトルにある「不都合」とは?

日本画は日本の絵画に感動したアメリカの東洋美術史家、哲学者、アーネスト・フェノロサが岡倉天心と明治時代に「発明」したものです。彼ら二人はその時点で、それまでの日本絵画をソフィスティケイトして処理、歴史を整理しました。
この時点で曲解、とは言わないまでも、フェノロサや天心にとって「都合のいい」解釈が多く含まれたのではないかと思われます。そしてそれが「アカデミズム」へとなっていきます。

だから、困るのです。江戸絵画が自由奔放で面白おかしいと。躍動感があってスリリングだなんて。
「アカデミズム」にとって、それこそ「不都合」なのです。

ちまちまとした「アカデミズム」に鉄槌をくらわすような、そんな爽快感のある1冊です。

500円で販売中。