【店部推薦図書18】「三位一体の神話」大西巨人(光文社文庫)



大西巨人は1919年(大正8年)生まれの小説家、評論家。その硬質な文体で知られます。

本作は1992年に推理小説として発表。当時多くの書評や批評で「モデル小説」と見なされ、殺される側は巨人自身、殺人者は井上光晴ではないかと話題、論争になりました。

この小説の魅力はやはり文体にあります。こんな文章を書けるのは後にも先にもこの人しかいないといえるでしょう。「硬質な文体」といえば聞こえはいいのですが、衒学趣味とフェティシズムの入り混じった様は変態そのものです。

しかしながら、肝心のミステリー部分は、ものすごく安っぽい。
「なんとかサスペンス劇場」と何が変わらないのか?というぐらい。

この落差がすごい。大西巨人という小説家は本物の天才なのだな。と、いたく感動いたしました。

ひょろひょろの「周縁文学」(ミステリー)を文体の力で無理やりに「純文学」に変えてしまう。ごくまれに、結局何が言いたいのかさっぱりわからないし、内容スカスカなのだが、なぜかおもしろく読めてしまう本があり、当店ではそれを「文パワー系」と呼んでおります。
それを代表的する1冊。

上下セット700円で販売中。