【店部推薦図書17】「文学のプログラム」山城むつみ(太田出版・批評空間業書)



山城むつみは1960年生まれの文芸評論家。「むつみ」という名前ですが男性です。
1992年に今作収録の「小林批評のクリティカルポイント」で群像新人文学賞評論賞受賞。著書としてはこれがデビュー作となります。

「日常系アニメ」というのをご存知でしょうか?
まったりした日常を、ただひたすら丹念に描くアニメで、「けいおん!」「らき☆すた」などがよく知られており、現在アニメ界のメインストリームとなっているといっても過言ではありません。

この本の面白さは、この「日常系アニメ」に近いものを感じます。
小林秀雄、保田與重郎、坂口安吾、ラカン「エクリ」日本語版序文など。これら、ほどほどポップな題材を、丁寧かつ地味にちまちまと論じていきます。
途中、くすっとする部分はあるものの、大爆笑は無く、淡々としたペースで進行。
論調も文学評論らしい固さで、かしこそうなことを書いているのに、なぜか強い手応えはなく、どことなくホンワカとしたアンビエント評論(?)です。

ただ、読み終えたときの「ちょっと、いいものを読んだ」感には得難いものがあり、あとがきで記された著者の葛藤を知るにつけ、なんとなく山城むつみさんのことが好きになっているという、不思議な本でした。

700円で発売中。