【店部推薦図書16】「山田稔 何も起らない小説」<セミナーシリーズ鶴見俊輔を囲んで(4)>



SUREは京都で細々と、だがセンスの光る本を発刊する編集、出版グループです。
山田稔(以下、山田)は京都在住の小説家、あるいはフランス文学者。中央の文壇とは距離を置いた、いわゆる「通好み」な作家として知られています。

100ページにも満たない小冊子ですが、内容は、SURE名誉顧問、鶴見俊輔(以下、鶴見)と山田を中心とした座談会の記録(開催は2003年)で、一般の方も参加されています。
参加メンバーの年齢層が若く、全員が熱心な山田ファンなため(この企画も山田稔を生で見たいという声に答えての開催らしい)テーマにそった熱い質問が飛び交い、それに対して山田がごにょごにょと答えていく。
具体的な作品を引き合いに出して質問がなされるので、すでに著作を読んでおられる方には山田の本音(?)が聞けるレアな内容となっています。

そしてやはり、座談の流れに見られるやんちゃな鶴見とシャイな山田、というバランスが絶妙です。
鶴見は、哲学者、評論家であり、そして政治活動家としても知られています。御存知の方もおられるでしょうが、アメリカ留学中にアナーキストとしてFBIに逮捕されたりしている、なかなかややこしい経歴の持ち主です。

SURE主宰、北沢街子の実兄でもある小説家、黒川創の司会で座談会ははじまりますが、山田は鶴見の出席を知らされていません。

山田 ・・・あ、鶴見さん現れた・・・(鶴見さん登場)

山田 いやーまいったなー。大変だこれは。もう黙ってよ。鶴見さんがいたらもう硬くなってなんにもしゃべれない。

第二章で鶴見が帰るところ。

鶴見 私は帰らないと。

山田 あっという間に時間すぎたね。

鶴見 訊きたい質問がだせてよかったよ。山田さんは名利を超えた世界に遊んでいることは確かだ。(タクシーが到着)

鶴見 いやどうもありがとう。質問できたからよかった。仮説をもっていたんだけどね。「日本国家の歴史の中で、山田さんは好ましい生き方をしていると思う」それが私の言いたかったことです。(鶴見さんご帰宅)

作家と評論家の対談として、決してバチバチきているわけではありませんが、かといってなれ合いでもない。いい具合のキャラ立ちと、ほどよい緊張感のなかで、京都の生活や野球、TVドラマまで会話は及びます。
なんとなく、この場に参加したかったなあ。と、そんなことを思わせてくれる本でした。

420円で販売中。

*鶴見俊輔氏関連の書籍は、以下のSUREサイトで通販可能です。現在、一般書店の取り扱いはないようです。
編集グループ<SURE> http://www.groupsure.net/