【店部推薦図書12】パンラボ



「好きが高じて」というスタンスの本は、熱狂を通り過ぎ、どれだけ冷静に着地できるかどうかにかかっていると思うのですが、その基本的なラインをクリアしながらも、さらに向こうの地平にたどりつているのがこの「パンラボ」。

テーマ、タイトル、装丁などのやわらかい見た目とは裏腹に、ハードコアな知識を問答無用にぶち込んでくる様は、いっぱいいそうで、実は全然いない『暮しの手帖』の正統な後継者。
と、表現しても良いと思います。

そして、パンに対する表現がすばらしい。

歯を立てて皮が裂ける瞬間の幸福があり、噛んでも噛んでも跳ね返る弾力があり、口の中でなお皮がパリパリしている。香ばしさとちょうどいい甘さの合体は瓦せんべいを彷彿とさせる。
(「パンラボ5・ベーグル」より)

いまから食べるデニッシュができるだけさくさくだったらいいと思うのは人びとに共通の願いではないだろうか。
(「パンラボ6・デニッシュ」より)

なかなかできる表現ではございません。
パンマニアというより、もはやパン屋店主レベルのくわしすぎる情報と物量、紙面いっぱいビッシリ文字が並んでいる様に、ちょっとひるんでしまう方もおられるでしょうが、この適度に詩的で文学的な文体が目にやさしく、「字面を追っているが全然頭には入っていない」という、こむずかし系文章にありがちな事態に陥ることがございません。

ふんわりとやさしく、噛みしめると奥深い野性味がある。
まさにパン的なパンのための本です。

全国の書店で¥1050(税込)で販売中(京都では、ガケ書房、恵文社さんでは店頭に並んでいるのを確認ずみ。残念ながら当店では扱っておりません)

マニアの魂百まで度 ★★★★★